事案の概要
業種:サービス業
関係する権利:商標権
請求側/被請求側:被請求側
クライアント:株式会社(小規模)
相手方:個人
概要:一般消費者向けの健康関連サービスを提供しているクライアントに対し、ある日、相手方から内容証明郵便が届きました。内容は、「サービス名称が登録商標と類似しており、商標権を侵害している」との主張で、使用の停止とライセンス料の支払いを求めるものでした。
1.はじめに
まず、当該登録商標の公報および原簿を取り寄せ、商標権の有効性と登録内容を確認しました。
その上で、対象となったサービスの名称・表示方法・提供実態を詳細に調査し、両商標および指定役務の類否を検討しました。
その結果、登録商標と対象商標の間には類似性があり、現状の名称を継続使用する場合、侵害リスクを否定することは困難と判断しました。
2.方針検討
検討の結果、名称変更による早期の侵害回避が最も合理的であると判断し、クライアントに新名称への切替を提案しました。
また、過去の使用に関する損害賠償額を試算したところ、売上げ額が限定的であったため、賠償額はごく僅少であり、訴訟費用に見合わない水準であることが明らかになりました。このため、相手方も訴訟提起による回収を現実的に考えにくい状況と判断しました。
そこで、当方としては、対象商標の使用を停止することを明確に示したうえで、過去分については損害賠償請求を行わない、もしくはごく少額の和解金支払いによる解決を目指す方針としました。
3.対応
クライアントにて新名称への変更作業を速やかに行い、店舗看板、店舗表示等をすべて修正していただきました。その後、変更後の写真を添付した「写真報告書」を作成し、相手方に送付しました。併せて、使用停止の経緯と誠意ある対応を記載した書簡を添えて、和解契約締結の可能性を打診しました。
交渉の過程では、過去の販売実績や売上高を根拠資料として提示し、損害額が極めて限定的であることを丁寧に説明しました。
結果として、相手方からは損害賠償を請求しない旨の回答を得ることができました。
4.事件終結
最終的に、相手方との間で以下を骨子とする和解契約を締結し、円満に事件を終結することができました。
- 商標権侵害の事実を認め、謝罪を行うこと
- 対象商標の使用を完全に停止すること
- 今後、同一または類似の商標を使用しないこと
- 双方間に債権債務が存在しないこと(損害賠償請求権なし)
5.コメント
本件は、サービス名称の類似に関する商標権紛争でしたが、冷静な事実確認と迅速な交渉対応により、訴訟に発展することなく解決に至りました。
商標に関する紛争では、権利の有効性や類否判断に加え、事業規模や損害額の実態に即した解決戦略を構築することが極めて重要です。
本件では、早期の名称変更と誠実な対応を通じて、相手方の理解を得ることができ、結果として損害賠償請求を回避した上で和解を成立させることができました。
当事務所では、単に法的リスクを分析するだけでなく、ビジネスの継続性を重視した実践的な解決策を提案しています。
商標権やブランド名称に関するトラブルが発生した場合でも、迅速な対応と的確な交渉によって、クライアントの事業を守ることが可能です。