1 著作権とは
1.1 著作権とはどんな権利か
著作権とは、創作された作品(著作物)について発生する知的財産権の一種であり、著作物の利用や保護に関する広範な権利を包括する制度です。この権利は、作品を創作した著作者に対し、作品の内容を守り、その利用をコントロールする権利を法律で担保することによって、著作者の経済的利益と人格的利益の両方を保護する役割を果たします。
具体的には、著作権は、著作者がその作品を知的財産として活用する権利(複製や配布、放送など)である一方で、著作物に対する改変を防ぎ、自身の名前が適切に表示される権利など、著作者の人格を尊重するための権利でもあります。このように、著作権は創作活動を経済的・文化的に支えるとともに、著作者が安心して作品を発表し、適切に活用できるよう支援する重要な法律です。
また、著作権の範囲は非常に広く、文学や音楽、映画、アート作品だけでなく、コンピュータプログラムやウェブデザインなどの現代的なコンテンツにも適用されます。このため、著作権の理解とその適切な活用は、創作者だけでなく、作品を利用する企業や個人にとっても不可欠な知識といえます。
特許権、意匠権等の登録型の産業財産権と異なり、著作権を享有するためには登録や申請などの行為は必要ありません。著作物を創作すれば著作権が発生します(著作権法17条2項)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
1.2 著作者人格権と著作財産権(狭義の著作権)
著作権には、大きく分けて人格的な権利(人格権)と、財産権的な権利(著作財産権、狭義の著作権)が含まれます。
著作者人格権には公表権、氏名表示権、同一性保持権といった権利が含まれます。著作財産権には、複製権、上演権・演奏権、公衆送信権などが含まれます。
1.3 著作権=作品のコピーを防ぐだけの権利(複製権)ではありません
著作権は「作品のコピーを防ぐ権利」(複製権)という理解は、誤ってはいませんが正確でもありません。
上記の通り、著作権とは、著作者人格権と著作財産権(狭義の著作権)を包含する権利であり、様々な権利(支分権といいます)が含まれる「権利の束」です。よって、作品のコピーを防ぐだけではなく、サーバへのアップロード(公衆送信権)、公衆に対する上映(上映権)、ピアノなどでの演奏(演奏権)、など様々な態様での著作権侵害行為を防ぐものです。
2 著作権侵害となる要件
著作権の侵害が成立するためには、次の要件が必要となります。
2.1 著作物であること(著作物性)
まず、保護対象に著作権が発生する大前提として、著作物であること(著作物性があること)が必要となってきます。
著作権法は著作物を次の通り例示しています。
(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。
しかし、これらはあくまでも例示に過ぎませんし、これらの類型に当てはまりそうなものでも、著作物性が認められない例は多いです。たとえば、単なる事実やアイデア、極めて単純な表現、単なるデータ、極めて短い・ありふれた表現などには著作物性が認められません。
2.2 著作物を著作権者に無断で利用していること
著作物を著作権者に無断で利用した場合に、著作権を侵害します。複製権については複製行為、公衆送信権についてはサーバーへのアップロード、といった行為がそれぞれ侵害行為となります。権利の内容に応じて様々な侵害行為があり得ますが、代表的なものを挙げると次の通りです。
無断複製(複製権などの侵害)
- 書籍、音楽、映画、ソフトウェアなどを許可なくコピーする行為。
- 例:第三者に配布するために、音楽CDをコピーする。
無断配布・公衆送信(公衆送信権などの侵害)
- 著作物をインターネットやその他の手段で不特定多数に公開する行為。
- 例:映画や音楽を違法サイトにアップロードして、他人がダウンロードできるようにする。
無断翻訳・翻案(翻訳権・翻案権などの侵害)
- 著作物を翻訳したり、改変したりして利用する行為。
- 例:小説を許可なく翻訳して出版する。
盗用・剽窃(複製権などの侵害)
- 他人の著作物を自分のものとして利用する行為。
- 例:他人の作品や写真を自作としてSNSに投稿する。
違法ダウンロード(複製権などの侵害)
- 違法にアップロードされた映画を違法と知りつつダウンロードする行為。
- 例:違法ダウンロードサイトやP2Pソフトを使って著作権侵害コンテンツを取得する。
3 著作権侵害の罰則・罰金
著作権侵害行為には罰則があります。主要なものを挙げると次の通りです。
著作財産権や著作隣接権を侵害した場合:十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金、又はその両方が科されます。
著作者人格権、実演家人格権等の侵害の場合:五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金、又はその両方が科されます。
4 著作権侵害とならない例外
外形的には著作権侵害にあたりそうな行為であっても、例外的に著作権侵害とならない場合があります。代表的なものを挙げると次の通りです。法で定められる一定の条件を満たすことが必要となりますが、これらの行為は著作権を侵害しません。
私的使用のための複製:自分や家族内での使用目的でのコピー(ただし、違法に配布された著作物は除く)。
引用:公正な範囲で出典を明示した上での引用。
教育目的での使用:学校などでの教育目的の利用(一定の条件下)。
5 まとめ
著作権侵害か否かは、具体的な行為や状況により判断されます。
「これは侵害に当たるのか?」と疑問に思う場合、早めに弁護士に相談することをお勧めします。適切なアドバイスを受けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。